つくば医工連携フォーラム2016に参加してきました。
特別講演「有人火星探査の医学的リスクと医工連携の必要性」(村井正JAXA参事)について、私のメモをもとに簡単に報告します。

まず、NASA Design Reference Missions for Flexible Pathを示し、ISS、月と比較した場合の有人火星探査の医学的な特徴を次のようにまとめていました。

・桁違いの地球からの距離
・帰還困難性
・多量の放射線被ばく
・少人数閉鎖環境によるストレス
・急病
・異文化
・未知のリスク
※量的のみならず、質的に異なるリスク



以下は、予稿集に掲載されている概要からの引用です(つくば医工連携フォーラム2016)。
有人火星探査を想定した場合、医学的観点から、これまでの半年程度のISS滞在と比較して、困難な課題が存在する。
・火星往復のための宇宙船、火星滞在施設の物理的制限
・地球から人類未経験の距離を長期にわたって離れることの物理的心理的影響
・長期間の無重力環境の後の火星上の1/3G環境への遭遇
・Van Allen帯の外に長期間出ることによる多量の放射線被ばく

次に、有人火星探査のような深宇宙での長期滞在の医学的リスクの軽減について

NASA HRP Path to Risk Reduction for a Planetary Missionを示し、この報告書は、ISSの運用を2024年まで延長すれば、現在アンコントロール(赤)な要因の多くを部分的コントロール(黄)にできると主張している。(ただし、演者はこの内容を懐疑的に見ていました)

*この報告書でも2024年時点でも、行動コンディショニング、飛行中の医療能力に加え、や放射線の被ばくについては2024年でもアンコントロールである。

次に、数名の宇宙飛行士による往復3年程度の火星探査ミッションを仮定すると、
南極基地などの類似環境における統計から推定すれば、ミッション中に生命に危険を及ぼす可能性のある緊急事態が起こる可能性は十分高い。

これまでのISSでの医学イベント(対象は日本人だけではない)を検証したところ、
一般的な病気は不整脈である。その他には、泌尿器?、歯科領域が想定される。不整脈は、過去にロシア人宇宙飛行士の例がある。緊急帰還リスクは0.1%以上と想定される。

(この部分に計算の根拠となる数字がありましたが、きちんと記録できませんでした。下記の参考文献をもとに自分でもきちん計算します。)
南極でのデータを例に計算すると、7名、2.4年で計算した場合、有人火星探査では
3-6回のうち1回の緊急帰還リスク、
10年で1人自殺する可能性がある。

まとめ
有人火星探査のためには、個別のリスクつぶしではなく、医学と工学の有機的な連携による医療システムの開発が必要である。

引用文献
NASA’S EFFORTS TO MANAGE HEALTH AND HUMAN PERFORMANCE RISKS FOR SPACE EXPLORATION, October 29, 2015, Report No. IG-16-003
NASA JSC, Evidence Report:Risk of Adverse Cognitive or Behavioral Conditions and Psychiatric Disorders, August 24, 2015

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